環境を汚さない自然農でもやれることを20年前にドイツとフランスで知った私は、「いつか日本で自然農をやろう」と決意しました。
私は28歳の時に日本を去り、英国に住むようになりました。その時代は日本でも70%ぐらい自給率があったはずなのですが、30年たった今日、日本の自給率は28%程度に下がっていることを目のあたりにしました。ヨーロッパや米国は、農業に対して国が手厚く保障をし、農業政策を早くから行うことによって土地のやせた英国でさえも98%の自給率があります。日本は国の農業政策の遅れによって日本の農業には後継ぎが育たない程、希望とやる気を失ってしまっているのが現状です。
3月11日の震災の時に、私たち自然農が作った乾燥野菜と味噌、そして洞爺の農場で湧いている天然水を被災地に持参し、とても喜ばれました。こういう時にはまず必要なのは食料と水なのです。それも安全な食料と水が必要なのです。3月11日以降私たちはより深く考えました。6年前から洞爺10反と静岡函南7反(1反=300坪=約992平方メートル)の2か所で自然農をやっていたのですが、本腰を入れる時期がきたと思い、2011年11月に農業生産法人豊受(株)を立ち上げました。
この成立には地元の役場、農協の方々には多くの協力をいただきました。私以外に総勢10名の農民がおり、私たちは喜んで働き、作物ができたことにありがたく感謝し、土壌菌やカブトムシの幼虫、ミミズが生きている土を最も大事にし、そして自然をいじめない事をモットーとしております。日々大いなるものの自然に逆らわず圃場で働かせてもらっています。
環境破壊は何も農薬、人工肥料、遺伝子組み換えの種の乱用だけでなく、その場で働く人々の想念も影響します。いやいや働いていては、自然を憎んでいては、良い作物はできません。働く喜び、希望、感謝を持って農業を行うことがとても大事になります。それには作った作物が安全であること、流通に乗せられること、そして売れることの3つが必要になります。
これからは作物を作っている農民がその主導権を持つべきであると思います。自分たちで作り自分たちで売っていくためには常時供給も含め、農民同士が集まり、力を合わせる必要があると思います。また買う側にも教育をしなければなりません。少しばかり高くても形がバラバラでも、少々虫に食われていても安心できる野菜や果物を選択して行く事によって自然を破壊する農業から自然を友として共存できる農業に変わっていくはずです。
私はヨーロッパで多く利用されている自然療法のホメオパシー療法(同種療法)を英国で学び、1997年に本格的に日本に導入しました。ホメオパシーは人、動物、食物、自然環境にやさしく、その物たちを本来の姿に戻します。私たちはホメオパシーと植物発酵液を使った土壌作りをしており、土も本来の土壌菌が一杯いる元の状態に戻しています。また、人をみる時はホメオパス(同種療法師)として、ホメオパシー療法だけでなく、食事の指導、賢く生きるための指導、心を浄化するための指導を共に行っております。その中で食が悪いために、いくらホメオパシーをやっても治っていかない方々に、自然農の野菜に変えたことによって改善が見られたことも多くありました。農薬や植物ホルモン剤、人工肥料、そして加工する時の防腐剤や人工色素、人工旨味による食原病があることに気づいたのです。
日本国民に本当の野菜、果物、ハーブの味を知ってもらいたく、また、自然をとても大事に思っている私たち自身から農業を立ち上げました。そして今、私たちの野菜は飛ぶように売れているのです。日本復興の鍵は、江戸時代、明治、昭和の初期に行われていた、自然型農業の復興なくしてはありえないと思うのです。生きとし生けるものが心も体も健康に健やかに生きられることを心から願っております。私たちの農業方針に賛同してもらえる農民の皆さんと力を合わせて日本の自然型農業復興を共におこないたいと思っております。
