現代の食糧事情
日本の国土、正確には耕地面積からの食糧生産量を積算すると、約7000万人というデータがある。農業関係雑誌で目に留めた。根拠の正誤性に関しては、主観的要素が多分にあると考えられるが、健全な農作物の生産という観点から正しい評価と認識している。では何故、12000万人分の食料が供給され、日本の歴史上かつてない飽食の時代を迎えられているのか。そればかりではない、日々排出される生ゴミのうち食べることが可能な部分が捨てられたものは、2002年では38.8%を占めていたとのデータもある。買ったままの状態で捨てられていたのは11%で、その6割が賞味期限の前に捨てられていた。
現代の農業生産事情
この食糧事情を支えているのは、大量の食糧輸入と共に農薬や化学肥料を用いた生産体制、遺伝子組み換えも含む品種改良品目の生産等、自然の摂理を無視した生産事情がある。
食料全体における自給率を示す指標として、農水省では供給熱量(カロリー)ベース、生産額ベースの2とおりの方法で算出している。
平成22年度では、カロリーベース総合食料自給率=1人1日当たり国産供給熱量(946kcal)/1人1日当たり供給熱量(2,458kcal)=39%
この数字は年々減少しており、自国の食糧を他国に依存している傾向がはっきり見てとれる。
耕作放棄地の拡大
食糧の流通事情の変革に伴い地産地消の概念、旬の概念ともに薄れ、偏向した食品が出回り、中小規模農家にとっては経営が成り立たない、農業の担い手がいなくなる等の負のスパイラルに陥っている。耕作放棄地は拡大の一途をたどっている。 さらには、農地利用に関しては厳しい法律の壁がある。本来,『農地の権利移転や転用』についてのお目付け役である農業委員会が農地の利用,是正に関して,その役割を適正に担っていれば,遊休農地の在り方について,これほどまでに大きな問題には発展しなかったであろう。
また,遊休農地については,農業経営基盤強化促進法に基づき,その所有者に対して,市町村長の勧告等の法的規制を発動し,適正利用を求めることとなっているなど,法的な改善措置が整備されている。だが現実には,この法的規制はほとんど発動されてはいない。つまり,遊休農地の拡大要因は,農業委員会が十分に機能していない点にある。
中山間地における農業事情
私たちの諸先輩たちは自然と共生していた。開拓した耕作地で農作物を生産し、山菜やキノコなど自然の恵みを求め山に入り、冬の暖房の為の薪を伐採し、豊富な薬草を採取し、里山はきれいに整備されていた。人間と獣との境界は明確に引かれ敵対する存在ではなかった。
しかし、里山が荒れ、管理された自然が失われると共に獣はその牙をむいた。サル、イノシシ、ハクビシン、シカ、その他、これらの獣害は並大抵のものではない。春から丁寧な作付を行っても、収穫期になると獣害対策をしない限り収穫は得られない。JAからは高額な電気柵等各種対策用具を紹介されるが、まともに採用していては借金が膨らむばかり。何よりも、苦労が報いられるこの季節に獣害に会うことは生産意欲を大きくそがれる。農業をやめる人が増加する要因ともなっている。
地域に即した農業の再生
耕作放棄地の解消、希望の持てる農業の再生。この第一歩として私が選択したのは薬草の栽培である。薬草は獣害を受けない。これは経験則である。ただし経済性を考慮すると、独自の生産では継続する農業経営は困難。薬草という特殊性により流通面の確保をしておく必要がある。またその生産に於いては専門的な知識も必要である。薬草は生命関連商品の位置づけからその品質の確保はもとより、ポジティブリスト制度により多くの制約がある。農薬を用いない自然農耕が必須である。また交差汚染を防御するシステムも必要である。このためには一定規模の管理地の確保が必要ともなる。
これらの前提条件をクリアーして取り組むには、確かなロードマップが必須である。 現在大手医薬品メーカーとの委託栽培契約を進めつつある。品目はシャクヤクとトウキからスタートする。6haの放棄地の活用も自治体と交渉している。さらには協力団体の存在と組織力が実現のキーワードである。
農業再生と環境保全に関する将来の展望
継続可能な農業の再生を思科する時、困難な事象ばかりが立ちはだかっている。経済性、現行法など、到底太刀打ちできないとも思われる。
しかし、逆の視点から思科してみると、国は自給率を上げることに奔走している。自治体は放棄地の解消に頭を痛めている。生薬メーカーは安心な国内産の生産に切り替えようとしている。国民は安全な農作物を求めている。このような各当事者の願いの中に切り口があると確信している。「薬草の豊富な御嶽の自然を守る」これを理念に掲げ、スタート時では薬草栽培による耕作放棄地の解消を表向きに位置付け、安全な農作物をここに集う皆さん方をはじめ、ホメオパシー会員の皆様方に提供するシステムの構築に尽力したと願っている。また、ホメオパシー療法で用いられる各種薬草の栽培に力点を置いた事業展開を図りたいと願っている。
